ベトナム奥地の学校-1 (長谷川義春)

 ベトナム中部高原の生活困難な地域に中学校の寄宿舎を寄付された長谷川義春さんが2012年5月に一時帰国され、FUJI教育基金では「囲む会」を5月12日に開きました。

 長谷川義春さんは、サイゴン解放前後の1975年から77年にかけて当時の南ベトナム・サイゴンに留学しました。
 1991年にベトナム・ホーチミン市内の東遊日本語学校に日本語教師として赴任し、1994年に同校を退職したあと、数人のベトナム人とともに“日越言語文化研究会”を発足させ、日越辞典の編集に当たりました。
 以降、日越辞典の編集のかたわら、日本の各劇団のベトナム公演に際しての台本のベトナム語訳、トヨタ財団から出版助成を受けて日本の童話・昔話・短編小説の翻訳出版、財政的事情などで正規の学校に通えない子供たちのボランティア教室に対する教科書・文具の寄贈などの“文化交流事業”を行なってきています。

 その会のとき、長谷川さんから、ベトナム奥地の学校の様子について、詳しいレポートを教えていただきました。5回に分けて掲載します。『トゥオイ チェ新聞』の翻訳(長谷川さんによる)と、長谷川さんのコメントです。

山岳地域の通学(トゥオイ チェ新聞2009年4月25日)

  子供たちは自転車で、チャウタム集落からカオベウ集落(ゲアン省(*訳注1)アンソン郡フクソン村)に抜けて学校にまで通じる道をたどっている。チャウタム集落は、四方を原生林の山に囲まれて周囲から隔絶したような地形の中にあり、“電気がない、道路がない(*訳注2)、学校がない、医療施設がない”地域で、100%の住民が“貧しい世帯”と認定されている(*訳注3)


学校に行くために、子供たちはひどいぬかるみの泥道を7kmに渡って越えて行かなければならない。毎日、子供たちはまだニワトリも鳴き出さない早朝に家を出て、トリたちが、もうとうに自分の小屋に戻ったころになって、やっと家に帰り着く(*訳注4)

ダオ ゴク ベト記

*訳注1:ゲアン省はベトナムの中北部に位置し、国内有数の貧しい地域として有名です。抗仏抗米戦争時代には勇敢で粘り強い優秀な戦士たちを数多く輩出した地域として、ベトナム国内でもよく知られています。故ホーチミン主席も、ゲアン省出身者の一人です。

*訳注2:人が生活している地域に「道」がないわけがなく、この場合は、「行政が作った正式な(車が通れるような)公道はない」の意味だと思います。

*訳注3:行政府から“貧しい世帯”と認定を受けるには、申請書を提出して調査を受けなければなりません。認定を受けると、行政府からそれなりの優遇策を受けられるようです。といっても、もちろん、日本の生活保護のように“健康で文化的な最低限度の生活を保障する”という制度とは全く異なり、“生命維持”を含む一切のものを保障するものではありません。あくまでも、何かがあった時に行政府からの経済的支援を優遇的に受けられるというに過ぎません。また、全国的な視野で見れば、貧しすぎて家族の中に識字者がいないために申請できないまま放置されている家庭も、まれではないようです。この集落が「100%の住民が“貧しい世帯”と認定されている」集落だとすれば、たぶん、集落中が助け合って申請書を提出できたのでしょう。

*訳注4:一般的にベトナムの朝は早く、私の家の前にある小学校でも、朝7時から授業が始まります。通学にこれだけの時間がかかるということは、7kmの道のりに3~4時間を要する平坦ではない山道だということでしょうか?                                 

 私が《山岳地域の通学》の記事を読んで考えたことは、

 「子供たちはみんな自転車を引っ張っているけれど、こんなヌカルミの山道なら、自転車で走るよりも徒歩で歩いたほうが安全なのじゃないか。それとも、こんなヌカルミは行程の一部だけかしらん…。」

ということでした。ベトナム中部山岳地帯の山道をまだ具体的に見たことがない私には、ちょっと想像しにくい状況でした。それでもはっきり分かったことは、自転車に乗ったり引っ張ったりしながら片道3,4時間の道のりを毎日往復するということは、その時間的ロスもさることながら、子供たちにとっては大変な体力を要する重労働であるに違いない…ということでした。帰宅しても、一息ついてから食事をして少し家の仕事を手伝うのがたぶん精一杯で、日本の子供たちのように宿題をやったり教科書を広げて予習をしたりする余裕は、時間的にも体力的にも精神的にも、まず望めないでしょうね…。

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